サレ夫の俺が仕掛けた、甘くも残酷な復讐劇

第4話 復讐の歯車

俺は、斎藤の婚約者である女性のSNSアカウントを特定した。彼女の名前は、佐々木恵美。彼女のアカウントには、斎藤との幸せそうな写真が何枚も投稿されていた。指輪をはめた手と手を取り合う写真、見つめ合って笑い合う写真。それらを見るたびに、俺の胸には激しい怒りがこみ上げてきた。

まず、恵美に接触した。匿名のアカウントを作成し、恵美にメッセージを送った。「斎藤さんのことで、お話ししたいことがあります。もしよろしければ、一度お会いできませんか?」最初は警戒されたが、何度かメッセージをやり取りするうちに、彼女は俺の言葉に耳を傾けるようになった。

そして、カフェで恵美と会う約束を取り付けた。待ち合わせのカフェで、俺は恵美の前に、美咲と斎藤が親密そうに写る写真の数々を突きつけた。それらは、俺が美咲を尾行した際に撮影したものだ。

恵美の顔から、みるみるうちに血の気が引いていった。彼女は、信じられないという表情で写真を凝視し、やがて、小さな悲鳴を上げた。

「これ、どういうことですか…?」

震える声で問い詰める恵美に、俺は冷静に、そして淡々と美咲と斎藤の関係を説明した。彼らがカフェで密会していたこと、美咲が俺に隠れて斎藤と会っていたこと、そして、斎藤が美咲に「寂しさを埋めてあげた」と言っていたこと。全てを、俺が見たまま、聞いたままに語った。

恵美は、やがて嗚咽を漏らし始めた。彼女の涙を見るたびに、俺の心には、冷たい満足感が広がっていった。斎藤が恵美に与えようとしていた幸せを、俺は今、目の前で打ち砕いているのだ。

「信じられない…信じたくない…」

恵美は、そう繰り返しながら、斎藤との思い出を語り始めた。彼がいかに優しく、誠実であったか。二人の結婚がいかに現実的であったか。そして、彼女がどれほど斎藤を愛していたか。その言葉を聞くたびに、俺の心はさらに深く沈んだ。俺もまた、美咲に同じような信頼を寄せ、同じような愛情を抱いていたのだから。

恵美は、最終的に斎藤との婚約を破棄することを決意した。そして、彼の会社にも、この事実を報告すると言った。俺の計画は、順調に進んでいた。

次に、美咲だ。彼女は、俺に「時間をください」と言ったまま、一切連絡してこなかった。俺は、美咲の実家が経営する小さな老舗旅館に目をつけた。美咲は、その旅館の一人娘で、将来的に旅館を継ぐことを望んでいると聞いたことがあった。

俺は、美咲の実家がある地域に滞在し、美咲の行動を監視した。彼女は、実家で両親の手伝いをしながら、時折、斎藤と密会しているようだった。俺は、その密会の様子を写真に収め、さらに、美咲の旅館での振る舞いにも目を光らせた。

美咲は、旅館の仕事には真面目に取り組んでいたが、時折、ぼんやりと空を見つめていることがあった。斎藤と会った後には、少し寂しそうな表情を浮かべていた。彼女は、斎藤との関係が、未来のないものであることを薄々感づいていたのかもしれない。

ある日、俺は旅館の宿泊客を装い、美咲の旅館に泊まることにした。チェックインの際、美咲は俺の顔を見るなり、驚きと恐怖に顔を歪ませた。

「健太…どうして…」

美咲のその言葉に、俺は笑顔で答えた。

「たまには、温泉でもと思ってね。偶然だね、こんなところで会うなんて」

俺の言葉に、美咲は明らかに動揺していた。彼女の目は、俺への恐怖と、何かを隠している焦りで揺れ動いていた。

その夜、俺は美咲を呼び出した。旅館の静かな裏庭で、俺は美咲に、恵美との一件を全て話した。斎藤が婚約破棄され、会社での立場も危うくなっていること。そして、その原因が、美咲との不倫関係であることを。

美咲は、俺の言葉を聞くにつれて、顔から血の気が失せていった。彼女の目は、絶望の色に染まっていった。

「そんな…嘘でしょ…」

美咲は、震える声でそう呟いた。しかし、俺の言葉に嘘偽りはない。斎藤は、もう、美咲の「寂しさ」を埋めるどころか、彼女に未来を与えることなどできない男になっていた。

「君が俺に与えた苦しみを、君も味わう番だ。斎藤は、もう君の元には戻れない。彼は、全てを失うだろう。そして、君もまた、大切なものを失うことになる」

俺は、美咲の目に、冷酷な光を宿しながらそう告げた。美咲は、その場に崩れ落ち、嗚咽を漏らし始めた。

そして、俺は、美咲の最も大切にしているもの、つまり、旅館を狙うことにした。美咲の旅館は、歴史ある老舗旅館だが、経営は決して芳しくなかった。俺は、匿名で、旅館の衛生面やサービスに関する悪評をSNSに流し始めた。さらに、過去の宿泊客からの不満の声を集め、インターネット上に公開した。

旅館の評判は、あっという間に地に落ちた。予約はキャンセルが相次ぎ、宿泊客の足は遠のいていった。美咲の顔は、日ごとにやつれていった。彼女は、憔悴しきった表情で、旅館の経営を立て直そうと必死だったが、俺の仕掛けた罠からは逃れられない。

美咲は、自分の手で、斎藤との関係によって、未来を、そして自分の大切なものを破壊したのだ。彼女の目に宿る絶望と後悔は、俺の復讐の成功を物語っていた。